チェリオ・ザ・ワールド
チェリオという飲料水メーカーがある。
500mlペットボトルやコーヒーなど、あらゆるジュースが自販機にて100円で買えてしまう。まさしく貧乏人の味方。チェリオに足を向けて寝ることは出来ない。
そんなゴッド・オブ・飲料水のチェリオに「アップルティー」なるものがある。
りんごの紅茶だろ? 普通じゃん。そう思うかもしれない。事実その通りなのである。何の変哲もない、ただのアップルティーである。
しかしながら、チェリオのワンダーランドっぷりはその味や見かけにはない。アップルティーともなれば、ストレートティーやミルクティーと並んで販売されるのが常である。言うなれば三下扱いされるのがアップルティーの宿命だろう。長く親しまれてきたストレートティー先輩やミルクティー先輩に「新入りの席は端っこな」と自販機でもあまり目立たない一段目の端っこに追いやられるものだ。
それが、チェリオでは下克上とでも言うべきか、なんとストレートティーもミルクティーもないのである。もっと言えばレモンティーもいない。それらを差し置いてアップルティーだけが我が物顔で鎮座しているのである。
これはどういうことだ。
アップルティーだけで世界を席巻できると思っているのだろうか。否。コンビニのパック飲料でさえ紅茶は種類を揃えているはずだ。マスカットティーなんて亜種も揃えるが、必ずストレートティーも置いている。午後の紅茶もそうだ。基本であるストレートティーを置かないなど常識的に考えて有り得ない。
まるで紅茶の世界が二分され、アップルティー側の世界だけが勝ち残ったかかのようだ。
そこで俺ははっとする。
そうだ、かつてこんな男がいたはずだ。
「わしのみかたになれば せかいのはんぶんをおまえにやろう」
あいつだ。あいつに違いない。
きっと仲間に引き入れた勇者にアップルティーの世界を与えてしまったのだ。なんということだ。そう、勇者の名はチェリオ。アップルティーの世界に閉じ込められた勇者は今も尚、自販機のアップルティーの中で外へ出る機会を窺っているのだ。
冒険者たちに告ぐ。
今こそアップルティーに閉じ込められた勇者を救う時だ。
さあ、100円玉を掲げよ。呪文を唱えアップルティーを買うのだ!
アップルティー500ml 100円 チェリオ自販機で販売中
……という長々しいステマでしたが、こんなCMいかがっすか?